2018年西日本豪雨災害の記録:水没車(プリウス)の取り扱い
2018年7月7日午前7時00分ころ:駐車場の状況
私が住んでいる飯塚市は、2018年7月7日午前5時14分に洪水警報が解除されました(大雨特別警報の解除は同日午前8時10分)。
昨夜の出来事が嘘かのように、付近一帯を覆っていた水は翌朝にはすっかり引いていました。
駐車場に停めていて水没したプリウスも、水が引いてしまえば見た目は殆ど変わりなし。
おっ!? 大丈夫か?
…と思いながらボディをよく見てみると、木屑とかが線状に付着しています。
この木屑の痕跡で、どのくらい水に浸かったかが分かりますが、見えますか?
分かりやすいように、線を引いてみました。
アパートの駐車場は付近の道路より海抜高度が高かったので、車はこの程度の水没で済みました。
が、家の前の道路の水没状況はこんな感じ。
私たちがアパート2階で「避難しない!」という選択をした後でも、向かいのアパートからは避難する人もいました。
その人は、救助隊のボートに乗せられて避難してました(+_+)
同時刻ころ:現状の確認
今では完全に水は引いているものの、昨晩は確実に水没していた車です。
やはり、まともに動くとは思えません。
同じような被害に遭って、保険会社への問い合わせ件数も増えるはず!
そう考えた私は、すぐに保険会社に電話しました。
保険会社のオペレーターからは「エンジンはかかりますか?」と訊かれましたが、そんなの試してみないと分かりません。
オペレーターに「エンジンはかかりますか?」と訊かれたら
と思って確かめてしまうのが人の性質ってもんでしょう。
でもですね、ちょっと待ってください。
水没した車のエンジンをかけるのはとっても危険です。
無知だった私は「エンジンがかかりますか?」と訊かれたので、水没したハイブリッドカーのエンジンがかかるかを確かめようとしたわけですが、これはやってはいけない事です。
しかし、感電のリスクを考えなかった私。
車内に残っていた水を排出し、内装に染み込んだ水をバスタオルで何度も吸って吸って吸いまくって、触れても水が滲んでこない程度になったところで運転席のシートに座ってみます。
う~ん… なんかケツの下から濡れてくる感覚が…
と思いながらも、エンジンを始動!
感電するおそれがあります。
特に、電気自動車やハイブリッドカーは通常の自動車よりも高い電圧がかかりますので、絶対にエンジンをかけないようにしてください。
うわぁ… 警告灯がいっぱい点いてるし、見たこともない表示が…
エンジン警告灯、電子制御ブレーキ警告灯、スリップ表示灯… 今まで点いたことのない警告灯が3つもついています。
さらに、インフォメーションパネルには
安全な場所で停車して下さい
と表示されています。
これ、ヤバイやつや!
とりあえず、現在のプリウスの駐車位置は"水没を避けるために一時的に避難していた他人の駐車枠"なので、自分の駐車枠に停めなおします。
しかし、少し動かすだけでギイギイガタガタいいます。
ブレーキを踏んでもガタガタといい、車台が上下にバウンドするので、とても怖い。
ブレーキを踏み込めば何とか停車することは出来るものの、怖くてスピードを出すことはできません。
アクセルを一切踏まず、クリープ現象だけで自分の駐車枠に車を移動させます。
車の運転をこんなに怖いと思ったのは久しぶりウホ…
駐車枠に停めなおした後で、ドアというドアを開放して、とりあえず乾燥を試みますが焼け石に水!
2018年7月7日午前8時00分ころ:保険会社に電話
エンジンがかかることを確認して、保険会社に電話をし直します。
どうやら、エンジンかかるかどうか聞いたのは、レッカー作業の際に車を動かすことが出来るかどうかを確認するためだったらしいです。
その後、午前10時前にレッカー車が来て、プリウスはディーラーのもとへ。
車と一緒に、私たち家族もディーラーに行きます。
レッカー業者の人に聞いたところ、同じような依頼(水没による故障車の搬送)で既に一日の予定が埋まっており、この作業員の方も休日返上で出勤命令がかかったとのこと。
2018年7月7日午前10時30分ころ:ディーラーでの打ち合わせ
プリウスをディーラーまで運んだのは良いものの、当然、1日や2日で車が修理されるわけではありません。
しかし、私が住んでいる所は公共交通機関が発達していないので、車がなければ生活できないような地域です。
私の通勤は自転車を使うなり他の手段でどうにかなるのですが、直近の予定として「結婚記念日の食事」「私の実家への帰省」「妻の実家への帰省」というイベントがあり、いずれも車がないと目的地にすら辿り着けません。
自動車保険の契約状況:入っててよかった車両保険
まず言っておきたいことがあるんですけど、実は私、去年まで車両保険に入ってなかったんです。
車両保険をつけると保険料って一気に高くなるし、そもそも、今までちょっと擦ったくらいの事故はあっても保険を使わずに自費で直してましたし。
ただですね。
去年、身近な場所で事件が起きたんです。
窃盗事件。
ウチのアパートの駐車場には同型・同色のプリウスが3台駐まってたんですけど、そのうち1台が盗まれたんです。
こえ~~~っ!
その後すぐに犯人は捕まったみたいなのですが、身近な所で事件があると今までにない危機感が芽生えていたので、自動車保険を更新する時に車両保険を追加しました。
正直、約3万円の保険料の上乗せはキツイなぁと思っていた部分もあったのですが、この時に車両保険を追加していたことによって、今回の水害で車両保険を使うことが出来ました。
人生で、泥棒に感謝する日が来ることになるとは夢にも思わなかったです。
6年落ちのプリウス、車両保険でおりる金額は最高で130万円でしたが、免責金額が5万円に設定していました。
レンタカー特約(車が使えなくなった時にレンタカーを借りる費用を支払ってくれる特約)は付けていませんでした。
ディーラーに代車があればいいけど、なければ自費でレンタカーを借りるしかない…
ちなみに、私が加入していた保険では、水害で車両保険を使うと翌年は等級が1ランクダウンになるうえ、事故あり係数1年が付きます。
保険会社からは「同条件で継続した場合、保険料は今までよりも3万円近く上昇するので、それを考慮して保険を使うかどうか決めてください」と言われました。
保険の適用を踏まえての選択肢:修理か、買い替えか
車両保険を使うのは大前提として。
まず、プリウスを修理するのか、それとも買い替えるのか。
そして、買い替えるならば新車を買うのか、中古車を買うのかを決めないといけません。
選択肢A:プリウスを修理する
メリット
プリウスを修理するメリットとしては、金銭的ダメージが少なくて済むことが挙げられます。
ディーラーの営業さんの話では、「多く見積もっても修理費は100万円くらいだろう」とのこと。
車両保険の上限が130万円なので、保険を使用してプリウスを修理した場合、手出しは免責金額の5万円だけで済みます。
デメリット
逆に、プリウスを修理するデメリットとしては、大きく次の2点が考えられます。
まず1点目が「水没車は何処に不具合が潜んでいるか分からない」ということです。
修理でかかった費用が130万円以内であれば、可能な限りの部品を交換してもらうことが可能です。
「修理は100万円あれば可能」と言われても、プリウスの存在意義といっても過言ではないハイブリッドシステム及び電気系統が完全にイカレてしまっていますし、修理後の引渡し時に万全の状態になっていたとしても、後日何らかの不具合が出た場合に
水没していた影響が今になって出たのでは?
と思ってしまいそうです。
もし時間差で不具合が出た場合、その修理代には車両保険は適用されず、自己負担になってしまうのもツラい。
次に、デメリットの2点目が「水没車を下取りに出した場合、殆ど値が付かない」ということです。
修理後、全く問題なくプリウスが復活したとしても"水没車"という記録は消えません。
つまり「これまでは不具合は起きてないけど、今後も不具合が起きないって保障はないよね?」ということで、下取りに出したとしても殆ど価値がないものになってしまいます。
今すぐ! というワケではありませんが
近い将来、もう一人家族が増える頃には車を買い替えたい!
と思っていたのは事実。
その車の買い替え時に、下取りが全く見込めないとなると資金計画も見直さないといけなくなります。
選択肢B:車を買い替える
そこで出てくるのが、"車を買い替える"という選択肢です。
車両保険で車を修理しない場合、修理の見積金額に応じたお金が振り込まれることになるのです。
要は、その保険金を頭金にして別の車を購入するというワケです。
メリット
車を買い替えるメリットとしては、2点。
まずは「ファミリーカーの購入自体は以前から考えていた」ということです。
車を買う場合、完全に趣味で買う人もいるでしょうが、多くの人は用途に合わせた車を買うことが多いと思います。
私はこれまで、マツダ・デミオ、トヨタ・bB、そしてトヨタ・プリウスに乗ってきました。
私がプリウスを購入した理由は、単純に燃費がいいからです(プリウスを購入した当時は職場から遠くに住んでいて、かつ、車通勤をしていました)。
私が乗っていたプリウスは、一度ガソリンを満タンにすれば1,000キロメートルは走れるので、ガソリンのことはほとんど考えなくてよくなりますし、燃費の良さを活かして色んな所に行かせてもらいました。
ただ、独り身、そして妻と二人の時は良かったのですが、子どもが生まれてプリウスにチャイルドシートを取り付けたりすると、やっぱり少し狭く感じるんですよね。
食料品を買いに行ったり、ちょっと実家に帰省したりするのでも、人と荷物で車内はパンパンです。
それでも、独身時代の引っ越しでは、プリウスのシートを全部倒してフラットにして、小さめの冷蔵庫や洗濯機を積んで、何往復もして一人で完遂したこともあります。
独身時代には"広い"と思えた車内空間も、人数が増え、それに伴って荷物が増えてくると手狭に感じてしまうのです。
あと、プリウスって、ちょっと広めの"α"でもスライドドアのタイプがないんですよ。
やっぱり、子どもが小さいうちはスライドドアは必須ですよね。
子どもが急にドアを開けて車外に飛び出して、隣に駐車していた車にドアをぶつけるなんていうのはよく聞く話ですし。
もう一つのメリットとして「修理の見積もりの金額次第ではプリウスの下取り価格よりも高くなる」ということが挙げられます。
自動車の下取りの相場を見たりしながら、私は
と思っていました(あくまで自分の予想です)。
本来の予定通りに数年後に車を買い替えた場合は、もっと下取り価格は下がっているでしょう。
そもそも、今回被害に遭ったプリウスは"水没車"になってしまったので、修理して完璧に直ったとしても、買い替え時の下取り価格には期待できなくなってしまっています。
いずれ買い替える予定があるのなら、プリウスに一番高く値が付くときに手放す方が良いのでは??
水没したプリウスに"一番高く値が付くとき"というのは、まさに修理見積を出してもらって保険金が支払われるときに他ならないんですよね~。
デメリット
車を買い替えることのデメリットは「貯金が減ること」です。
今、我が家は新居を建設中なわけですが、色々と考えた結果、35年のフルローンで建てることにしました。
ファイナンシャルプランナーと相談して無理のない返済計画を立ててはいるものの、計画通りにいかないのが人生です。
"不測の事態"が発生したときのために、なるべく多く現金を手元に置いておきたい。
つまり、貯金をなるべく減らしたくない。
「支払われた保険金の範囲内で購入することが出来る車を選ぶ」という方法を使えば、手出しすることなく車を手に入れることは出来ます。
つまり、修理の見積もりが100万円だった場合、免責金額の5万円が引かれて95万円が保険金として支払われることになるので、諸経費を含めて95万円以内の車を購入すれば手出しをしなくてよい(貯金を減らさなくてよい)わけです。
とりあえずの結論として
見積もり自体はすぐに出なかったものの、ディーラーの営業の方からは「概算で80万円にはなるし、これから細かい所を見ていけばもっと修理金額は上がる可能性がある」と言われました。
プリウスを修理するか、それとも保険金を利用して車を買い替えるかと考えた場合、私は"買い替える"という決断をしました。
プリウスの修理、買い替えのいずれにもメリット・デメリットはあります。
しかし、一番重視した点は"安全性"です。
妻と子供を乗せて移動する以上、「運転の途中で車が停止する」とか「変な挙動をする」とかいうのが怖いんです。
私は水没車に乗ったことはありませんし、「後々不具合が出るかもしれない」というのも私の想像に過ぎないのかもしれないのですが、妥協した選択をした結果、"何かあった時"には死ぬほど後悔したくなると思うので、そんな思いはしたくない。
確かに、買い替えるという選択肢にも金銭的にきつくなるというデメリットがあるのですが、スライドドアの車に買い替えることでドア開閉時の事故を防ぐことはできますし、いずれミニバンを買う予定だったことを考えれば「将来払うべきコストを先払いしている」と、大きな出費も許容できます。
中古車を買うのか、新車を買うのか?
これ、めっちゃ悩みました。
次に買う車の条件としては
は欲しいところ。
で、水没したプリウスをレッカーで運んだディーラーで、以前から狙っていた車でとりあえずの見積もりを出してもらったら350万円だったんですよ。
仮に保険金が100万円おりたとしても、250万円は手出ししないといけない。
貯金なくなるじゃん…
会社で積み立てている財形年金とかを切り崩せば貯金ゼロにはならないんですけど、税金が優遇されている財形年金を切り崩したくはないし…
私はこれまで"マツダ・デミオ"⇒"トヨタ・bB"⇒"トヨタ・プリウス"と3台の車に乗ってきましたが、プリウスが人生で初めての新車、つまりデミオとbBは中古車でした。
私の経験ですので、全ての中古車がそうだとは言いませんが、私が買ったデミオとbBはいずれも100万円以下のものでして、しょっちゅう故障していました。
車自体は安く買うことが出来たものの、修理費や維持費で結構高くついたというイメージが自分の中に出来てしまいました。
しかし、初めて新車で買ったプリウスは、点検・整備もディーラーに任せていたこともあり、オー〇〇ックス等に比べると割高にはなりましたが、故障はありませんでしたし(一度だけリコールがあった)、中古車にはなかった安心感がありました。
この経験を踏まえると、やっぱり次の車も
って思うんですよね。
妻や子供のためというのもあるんですが、自分だってストレスなく運転したい。
妥協した車に乗って数年間暮らすなら、自分が納得した(欲しい)車に乗って数年暮らす方がQOLは高くなると思うんです。
代車をゲット!
実際のところ、新車を買うか中古車を買うかというのは考えに考えて、一時は
と思ったのは事実です。
が、結局はトヨタのディーラーの営業さんの人柄もあって新車を買うことにしました。
ディーラーには、私と同じように水没した車を修理するために持ってくる人が多くいて、貸し出す代車の数も足りていなかったのですが、優先的に代車を手配してくれたので、新しい車が来るまで移動手段に困らずに済みました。
で、「とりあえず一週間は!」と言われて貸してもらった代車がこちら!
ダイハツ・タント、2012年式!
スライドドアだし、車高が高い分、車内は広く感じるしで
と思うほど良かったです。
軽自動車なので、アクセルを踏んだときの加速については"お察し"ですが。
そして、次に手配してもらった代車がこちら!
ホンダ・ライフ、2004年式!
同じ"軽"でも、年式や走行距離によってここまで違うのかと思うほど、この車はきつかったです。
アクセル全開でも、上り坂では50キロ出すのも一苦労(しかもブオオオオーーンって音が凄い)!
ブレーキパッドが劣化しているのか、ブレーキの効きが悪い(一度、マジでぶつかりそうだった)!
そして何より、クーラーが効かない!
風呂かよ!
もちろん、自動車に装着している温度センサーなので気象庁の発表よりも高い数値が出るのは分かっているのですが、それでも43℃て…!!
車がない生活に比べたらマシ、車がない生活に比べたらマシ、車がない生活に比べたらマシ…
そうは言っても、記録的な猛暑の中、クーラーの効かない車で、自宅から車で2時間の距離にある妻の実家まで1歳の長男を連れて移動するのは大変でした。
まとめ
水害に遭ったものの自動車だけの被害で済んだのは、不幸中の幸いだったのでしょうが、自動車のその後の処理ひとつでも本当に苦労しました。
今回の水害の処理に関しては「被災証明書の発行」「車両保険の請求」「廃車手続き」「自賠責保険の解約」といったトピックもあるのですが、仕事が忙しくなるので書くのは結構あとになると思います。
おまけ:廃車を選択したプリウスの後日談
廃車の手続きをした2018年7月末、最後に愛車の姿を撮影しました。
ありがとう、プリウス( ;∀;)
プリウスが水没した後、一応"修理して乗り続ける"という選択肢もあったのですが、買い替えてプリウスを廃車するという選択をしたのは私。
これまで、プリウスの燃費の良さを活かして色んな所に行ったなぁ… と、思い出が蘇ります。
九州の県はすべて周った。
それに、中国地方も制覇したし、四国も一周した。
最後に車内の写真も撮っておきたいな、と思ってドアをオープン。
ヴォエェェッ!!
なんじゃこりゃあっ!!
密閉され、太陽の光で熱せられたプリウスのドアを開放した瞬間、出てきたのは熱気と湿気が混じったムッとした空気。
そして、強烈なドブの臭い。
先ほどまでのセンチメンタルな感情を一気に吹き飛ばす、そのくらい衝撃的な臭いです。
実は、今回の水害で私と同じようにプリウスが水没した同僚がいました。
その同僚は、私のプリウスのようにハイブリッドシステムまで故障しなかったものの、パワーウインドウが壊れたりしていて、やはり電気系統に異常を来たしていたそうです。
しかし、電気系統の異常より何よりも、一番キツイのは"臭い"だと言っていたんです。
私の車も水没していましたが、水害の翌日には"臭い"というのは感じなかったため
と思っていました。
ただ、水害から20日以上経ち、まともに処置していなかったプリウスの車内の臭いを嗅いだ時に、同僚の言っていた"臭い"の意味が分かりました。
これ、無理や。
ハッキリ言って、このプリウスの"臭い"を嗅ぐまでは、買い替えたことに対して罪悪感のようなものを感じていました。
しかし、吐き気を催すドブのような臭いを嗅いだ瞬間に
と確信しました。
こんな臭いがする車に妻や子供を乗せたくないし、この先何年も堪えられない!
そのくらい、"臭い"は強烈でした。
プリウスを購入して約6年、総走行距離74,937キロメートル。
プリウスくん、今までありがとう!
君のことは忘れないよ!!